今回は「法定三帳簿」の中の「賃金台帳」についてのお話です。
賃金台帳は、労働基準監督署の調査では必ず確認される書類の一つです。
賃金台帳は労働基準法第108条(労働基準法施行規則第54条)の規定により、下記項目の記載が必要とされています。
一 氏名
二 性別
三 賃金計算期間
四 労働日数
五 労働時間数
六 残業時間数、休日労働時間数及び深夜労働時間数
七 基本給、手当その他賃金の種類毎にその額
八 法第二十四条第一項の規定によつて賃金の一部を控除した場合には、その額
(六は今泉が表記を簡略化しています。 詳細は条文を当たって下さい)
いかがでしょう? 改めて示されると「結構細かくあるんだなぁ」と思われたのでは有りませんか? 御社の賃金台帳には必要項目が漏れなく記載されているでしょうか?
「ウチには『賃金台帳』は無いけど、短冊型の給料明細なら残してある」と言われる社長様もいらっしゃいます。
書式に定めは有りませんので、上記記載事項を満たしていれば「短冊型給料明細の控」でも賃金台帳とすることは出来る訳です。
税務署で配布されている源泉徴収簿の裏面にある「給料・手当等の支給金額の内訳」を指して「賃金台帳です!」と言われることがあります。 しかい、良く確認して見ると、上記の項目が漏れなく記載できる書式ではありません。 満たしていない必要項目がある以上、厳密には賃金台帳という事は出来ません。
もう20年以上前(でも、当時も上記の法律規定はあったのですよ)の話ですが、労働保険年度更新受付事務のお手伝いとして、某銀行のフロアで労働基準監督署の職員さんと申告書作成・受理の業務を担当したことがあります。
いらっしゃるのは商店街のお蕎麦屋さんや洋品店さんなど、零細企業様が多かった印象があります。 賃金台帳など無い方の方が多かったですね。
酷い例ではチラシの裏側に「○○さん、230万円」とガッサリ支給年額を記載したものと申告書をお持ちになるケースもありました。
それでも監督署職員さんは何も問題にせず、そのまま受理します。 給料の金額から「この方は雇用保険の被保険者ではないか?」と思われる方がいても、その点には何も触れません。
正直「行政が、随分いい加減な処理をするもんだ!」と思いました。 それ以来、年度更新の行政協力は一切止めてしまいました。
話がそれましたので戻しましょう。
法律に規定がある以上、項目が抜けていれば厳密には賃金台帳とは言えません。 ですが、記載の内容すべてが否認される訳では有りません。 とは言え、労働基準監督署の調査であれば、まず間違いなく指摘を受ける部分でしょう。
せっかく調製するのです。 監督署の調査にも問題なく耐えられる、条件を満たした賃金台帳を、最初から調製しておく方が宜しいのではありませんか?
厚労省が書式例として公開している賃金台帳がこちら。
ですが、う~ん、どうでしょう・・・ この書式ではちょっと使い辛いと思うのですが?
弊所で作成したシンプル版の賃金台帳がこちら。 (Excelファイルがダウンロードされます)
これ以外にもネットで検索をすれば、様々なフォームが見つかると思います。 自社に合った、使いやすいものを選んでお使いいただくのが宜しいでしょう。
賃金台帳は1人1年分1枚の書式と、月毎に社員をまとめて記載する書式の2つに大別されます。
弊所では、特に中小企業様には使い勝手の良さから、1人1枚の書式をお勧めしています。