皆さんの会社では、残業は行われていますか?
最近のコロナ禍により業務量の減少、時短営業等で「残業どころではない!」という事業主様も多いかもしれません。 ですが、コロナがはやる前はどうだったでしょうか?
残業がある場合には労使で「時間外協定」を結んで、労働基準監督署に届け出ることが必要です。 皆さんの会社ではいかがでしょうか? ちゃんと手続きをされていますでしょうか?
この「時間外協定」は労働基準法第36条(労働基準法施行規則第16条~)に規定されているため「36(サブロク)協定」とも呼ばれています。 「時間外・休日労働に関する協定届」が正式な名称です。
1日8時間以上働かせてはいけない
まず、労働基準法では32条で「1日8時間、週40時間を超えて労働させてはならない。」と規定していることをご存じでしょうか。
「そんなこと言ったって、仕事があれば残業でも休日出勤でもなんでもやってこなさなきゃ、回らないだろうが!」
経営者の皆さんから、そんな声が飛んできそうですね。 おしゃる通り! 仕事が定時で終了する日ばかりではありません。
受注が多くて仕事が定時だけでは処理しきれない(嬉しい悲鳴ですが)、お客様から急に「明日、朝イチで配達してヨ!」なんて要請があって準備しなきゃ等々、残業しなければならない、休日出勤をしなければならない状況は、中小企業にとっては日常茶飯事です。
もちろん行政もそのことは重々承知しています。 そこで、労働基準法36条に
1.労働者の過半数で組織する労働組合がある場合にその労働組合、ない場合には労働者の過半数を代表
する者と
2.書面による協定を結び
3.行政官庁(労働基準監督署)に届け出た場合に
4.1日8時間、週40時間を超え、または休日に
労働させることができる。 と定めているのです。
この協定を結び、労働基準監督署に届け出て、やっと8時間を超えた残業も、週40時間を超えた休日出勤も可能になるのです。
逆に言えば、この協定を届け出ていなければ1分1秒たりとも残業はさせられない、ということなのですが、ご存じだったでしょうか?
では、協定を結び、労働基準監督署へ届け出れば、残業は制限なく自由に行うことが出来るのでしょうか?
以前は「36協定の結び方によっては、残業時間は実質青天井である」かのような報道記事も見受けられました。
しかし、実際問題としてあまりに長時間の協定届を提出しに行けば、受付窓口で強力な指導を受けます。 また、無理に通せば監督指導に入られかねません。 中小企業にとっては実質的に「目安時間」という制限があった、というのが実情です。
その「目安時間」に罰則を付し「法的な上限」として強化する法改正が行われました。 2020年4月からは中小企業にも適用されています。 時間外協定の留意点などは下記のパンフレットが参考になりますので、ぜひ目を通して下さい。
パンフレット:36協定で定める時間外労働及び休日労働について留意すべき事項に関する指針
また、それに伴い届け出様式も新しくなりました。 下記のパンフレットは、さらに2021年4月からの新様式です。
パンフレット:36協定届が新しくなります
実際に記載する様式はこちらのサイトから入手することが出来ます。
時間外協定を届ていないとどうなる?
「ウチは協定なんて結んでないけど、残業しちゃってるし、困ってないよ」
そんな中小企業の事業主様もいらっしゃるかも知れません。 ですが、本当は労働基準法違反をしてるわけです。
時間外協定の届け出をせずに残業をさせていることが表沙汰になれば、労働基準監督官から法違反を問われます。
時間外協定は、協定をした上で、労働基準監督署に届け出なければいけませんが、届け出さえしていれば良いという訳ではありません。 協定した時間を超えて時間外労働を行なってしまうと労働基準法違反になります。
時間外労働と休日労働の合計時間が1ケ月100時間以上になる、時間外労働と休日労働の合計時間が2~6ケ月の平均の、いずれかが80時間を超える場合も基準法違反になってしまいます。
時間外協定違反をした場合には「6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金」の罰則が定められています。
実際には、時間外協定が届けられていないだけで、その他に著しい法違反がない場合であれば「時間外協定を速やかに届け出るよう」との是正勧告を受け、届を提出すれば済むケースが大半でしょう。
だからと言って「監督署に指導を受けたら届け出ればイイや」などというものではありません。
時間外協定は労働時間管理の問題に直結しています。 それは時間外手当(=給料)の問題でもあり、働く社員の健康問題にもつながる、労務管理の入り口の重要なポイントとなる届け出の一つです。